撤退の農村計画 > 記事 : 林直樹(2011):国土利用再編による道路維持管理費の削減.平成23年度農業農村工学会大会講演会講演要旨集,670-671.
  • 林直樹(2011):国土利用再編による道路維持管理費の削減.平成23年度農業農村工学会大会講演会講演要旨集,670-671.

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    共同研究会「撤退の農村計画」では、熊本大学の学術レポジトリにならって、原則として、全文を公開しています。これは著者最終稿をもとにしたものであり、その後の発行者・出版者側のレイアウト調整・誤字脱字調整、著者の校正は入っていません。

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    ↓以下、要旨。

    1. 背景と目的

    今年うまれた子どもが70歳になるころ(2081年),わが国の人口は2005年の半数以下,6248万人になる(死亡中位・出生中位)1)。1人あたりのインフラ維持管理費の負担は大幅に増加するであろう。国土利用を再編しながら,インフラもある程度撤収する必要がある。この研究では道路網を取り上げ,維持管理費の削減幅を試算する。ただし北海道は土地利用が大きく異なるため,今回は対象から除外する。同種の研究として土屋・室町2)をあげることができる。そちらの対象は都市とその周辺であるが,こちらの対象は国土全体,むしろ中山間地域である。

    2. データと試算の方法

    主なデータと出典を表1に示す。それらは一辺約10kmの2次メッシュ(世界測地系)に組み替える。集落どうしの支援を考えて,あえて2次メッシュを選択する(撤収は広い範囲が無人,それに近い場合のみ)。今回は戸数(注1)が「一定数」以下の2次メッシュにある「幅員3m以上5.5m未満の道路」を撤収すると仮定し,維持管理費の削減幅を求める。撤収される道路はすべて市町村道とみなす。1kmあたりの年間維持費(雪寒費を除く)は50万円,雪寒費は40万円とする3)。雪寒費の計上は豪雪地帯に限る。

    165戸:豪雪地帯の集落を維持するためには5戸以上が必要である4)。一方,中山間農業地域の集落の面積は平均で3.0km2である(2000年世界農林業センサスから計算)。これらから,「一定数」を165戸(注2)とする(今回は豪雪地帯以外にも適用)。

    550戸:中山間地域で農業生産や生活などの集落機能を維持するためには農家5戸以上が必要である5)。中山間農業地域における農家の割合は0.30である(世界農林業センサスから)。これらから,「一定数」として550戸(注3)も使用する。

    表1
    ↑表1

    3. 試算の結果

    戸数が「一定数」以下のメッシュを図1と図2に,豪雪地帯を図3に示す。165戸以下のメッシュにある道路の延長は11,244km,年間維持費56.2億円,雪寒費26.4億円,「維持費+雪寒費」82.6億円となった。550戸以下については,31,229km,156.1億円,64.7億円,220.9億円となった。

    図1、図2、図3
    ↑図1、図2、図3

    年間220.9億円といえば決して少なくない。これは月収20万円の集落支援員を約9千人増やすことができる金額である。ただし道路を撤収するためには,奥地の土地利用を手間がかからないものに切り替える必要がある6)。「市街化調整区域」のようなものが奥地にも必要であろう。なりゆきまかせでは道路の撤収は難しいことを強調しておく。

    謝辞:共同研究会「撤退の農村計画」のメンバーの皆様から多大なるご協力を受けた。深くお礼申し上げる次第である。本研究の一部は,環境省の環境研究総合推進費(E-0902)の支援により実施された。

    (注1) 「世帯数」と「戸数」は同じとみなす。「戸数」に統一する。
    (注2) 5戸×(1メッシュの面積100km2÷集落の面積3km2)≒166。165戸以下では維持は難しい。
    (注3) (5戸÷農家の割合0.30)×(1メッシュの面積÷集落の面積)≒551。集落機能がなくなれば,集落そのものも早晩消滅すると考える。

    参考文献

    1) 国立社会保障・人口問題研究所(2007):『日本の将来推計人口(平成18年12月推計)』,厚生統計協会.
    2) 土屋貴佳・室町泰徳(2006):都市のコンパクト化による道路維持管理費用削減に関する研究.都市計画論文集,41-3,845-850.
    3) 道路投資の評価に関する指針検討委員会(1999):『道路投資の評価に関する指針(案)第2版』,日本総合研究所.
    4) 藤沢和(1982):集落の消滅過程と集落存続の必要戸数―農業集落に関する基礎的研究(I).農業土木学会論文集,98,42-48.
    5) 橋詰登(2004):消滅集落への統計的アプローチ―農業集落の存続と中山間地域での存続条件.農業と園芸,79-10,1049-1056.
    6) 林直樹(2010):道路などの撤収・管理の簡素化とその効果(林直樹・齋藤晋編,『撤退の農村計画―過疎地域からはじまる戦略的再編』).学芸出版社,pp.161-166.





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