撤退の農村計画 > 記事 : 関口達也(2014):徒歩移動可能限界距離の制約下における医療施設利用可能者の推定.H26農業農村工学会大会講演会要旨集,76-77.
  • 関口達也(2014):徒歩移動可能限界距離の制約下における医療施設利用可能者の推定.H26農業農村工学会大会講演会要旨集,76-77.

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    共同研究会「撤退の農村計画」では、熊本大学の学術レポジトリにならって、原則として、全文を公開しています。これは著者最終稿をもとにしたものであり、その後の発行者・出版者側のレイアウト調整・誤字脱字調整、著者の校正は入っていません。

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    ↓以下、要旨。

    1,はじめに

    近年,過疎地域では少子高齢化と人口減少が同時に進行し,住民への医療サービスの維持が課題となっている.その対策の一つとしての,効率的な医療施設(以下,「施設」)の配置計画には,各施設の利用者数の把握が重要である.施設利用者を推定する時,施設から徒歩圏域内の人口を考える(Joseph et al (2009), Philippe et al(2007)など)事が多い.しかし過疎地域では高齢者も多く,バスの重要性も高い.バス利用が可能な人口の多い地域は,車や徒歩での施設到達が困難でも,一定の施設利用可能性を有する.

    施設配置と人口分布を扱った研究として,坂本ら(2012)は用途ごとに施設を分類し,周囲の人口密度,異施設間の集積の特徴を明らかにした.だが,施設利用者数への言及はしていない.また,小熊ら(2009)は,施設利用者の住所から,施設の統廃合に対応した,新たなバスルートの構築方法を提案した.しかし,このような詳細なデータは,一般に入手が困難である.

    以上より,本稿では地理情報システムを用いて,各施設の利用可能者数の,簡便な推定方法を提案する.その際に,バス利用を考慮して,人口,医療・バス施設の分布から徒歩での移動可能距離に限界がある制約下で計算を行う.これにより,地域の実情を考慮し,施設利用の需給の偏りを,より詳細かつ定量的に論じる事を可能にする.そして,得られた知見を施設,公共交通計画の検討の一助とする事を目的とする.

    2,手法

    K個の施設,N個のバス停を有する地域を考える.まず,各バス停と利用施設を対応付けるため,ボロノイ分割により,施設k(k=1,2,…K)が最寄りとなる領域Rkを生成する.Rk内のバス利用者は原則,施設kを利用する(1)と仮定し,施設kと最寄りバス停との距離をdkとする.

    次に,徒歩による移動限界距離をCとする.この条件下で施設kを利用可能な人数Pkは,1)徒歩のみ,もしくは2) バスを利用して,施設kに到達する到達する人数の和である.前者をPwalk_k,後者をPk_busとする.Pwalk_kは施設kから半径Cの領域内の人口であり,Pk_busは以下の様に推定する.バス利用者は,施設kの最寄りバス停から施設kまでdkだけ移動するため,居住地からその最寄りバス停まで徒歩で移動可能な距離は,C-dkとなる(図1).よって,施設kを利用するバス停i(i=1,2,…nk)周辺の施設kの利用可能人数pkiは,バス停iからC-dkの円領域のうち,徒歩圏域との重複を除いた部分の人口である(図2).これを,nk個のバス停について考えると,Pk_busは(1)式で表わされる.

    式01
    ↑式(1)

    よって,施設kの利用可能者数Pkは以下である.

    式02
    ↑式(2)

    図01
    ↑図1

    図02
    ↑図2

    3,実データへの適用

    本稿では,地域内に7つの医療施設を有する,群馬県みなかみ町を対象とした.人口データは,2分の1地域メッシュ(政府統計の総合窓口 2010),医療施設,バスルート,バス停のデータは国土数値情報ダウンロードサービスより入手した.図3に各バス停の最寄り領域の分割結果,人口及び医療・バス関連施設の分布を示す.

    図03
    ↑図3

    表1に計算結果をまとめる(2).施設ごとに差はあるものの,病院から徒歩圏内のみを考えた時と比較して,バス利用を考慮すると,約2.3〜10.8倍の人口が各施設を利用可能になる.この差異は,各施設を最寄りとするバス停数の違いによる.地域の全人口は21,531人であり,施設から徒歩圏内の人口のみを考慮した場合はその13.9%が,さらにバス利用を考慮すると,施設利用可能人口の割合が63.0%にまで増加する.この施設利用可能人口の割合は,施設数や人口の減少が進む過疎地域において過疎の度合いを計測する,有用な一指標になるであろう.

    表01
    ↑表1

    4,今後の課題

    より現実の人々の行動を指標に反映する事が挙げられる.具体的には,1) 利用施設の選択の際に施設の種類を区別,2) 世代別の徒歩移動可能距離の設定,3)バス移動可能範囲の制約設定などがある.また,指標の有用性の確認のため,実際の各施設の利用者の居住地とその人数との比較から,本稿の推定結果との照応を行いたい.

    注1)Rkに属するバス停でも,バスルートの全長2.5km(3)以下で,同一ルート上の他のバス停が他の医療施設kの最寄りバス停となっている場合には,そのルートに属するバス停は全て施設kを選択するものとした.
    注2)人口は,メッシュと重複した面積に応じた按分により推定した.なお,いずれのバス停からも500m以上離れた施設については,徒歩圏域の人口のみを推定した.
    注3)バスで10分以内(15km/hの計算)とした.

    参考

    ・小熊妙子,南場一美,佐々木諭,塚田芳久,布施克也,田辺直仁,星野恵美子,関谷昭吉,鈴木宏(2009) 医療機関の統廃合に伴う通院患者のアクセシビリティの変化への対応策の一考–地理情報システム(GIS)によるバスルートの構築,月刊地域医学 23(12), pp952-958
    ・坂本圭一,筧敦夫,生田京子,山下哲郎(2012)「GISを用いた過疎地域における医療福祉施設の配置実態に関する研究」,日本建築学会学術講演論文集,pp385-386
    ・Joseph R.S., Scott,H., Daikwon H.and John, C. H. Jr.(2009) Association between neighborhood need and spatial access to food stores and fast food restaurants in neighborhoods of Colonias. International Journal of Health Geographics, 8(9)
    ・Philippe A., MarieS. C., Richard S. (2007) The case of Montréal’s missing food deserts: Evaluation of accessibility to food supermarkets. International Journal of Health Geographics,6(4)





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