撤退の農村計画 > 記事 : 関口達也(2015):過疎地域における事業所立地の変遷と多様性に関する研究.平成27年度農業農村工学会大会講演会講演要旨集,182-183.
  • 関口達也(2015):過疎地域における事業所立地の変遷と多様性に関する研究.平成27年度農業農村工学会大会講演会講演要旨集,182-183.

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    スライド1、2スライド3、4スライド5、6スライド7、8スライド9、10スライド11、12
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    ↓以下、要旨。

    1,はじめに

    地域における都市機能の充実性は、地域の暮らしやすさを規定する。過疎地域では近年、人口減少に伴って生活基盤としての都市機能が衰えつつある一方で、都市機能を集約した「小さな拠点」による地域再生も検討されつつある。地域に立地する種々の店舗・事業所は都市機能を形成する要素であり、拠点整備の際には、その立地傾向の把握は重要である。本稿では過疎地域と都市地域を比較しつつ、近年の事業所の分布の多少・多様性の現状把握を行う。

    地域の店舗や事業所の立地傾向を分析した研究はこれまでにも複数存在する。たとえば青木ほか(1999)は、中山間地域の商業立地の変遷を分析し、地域内の商業集積の発展・衰退の有無と地域の人口動態の関係性や,幹線道路沿いにおけるチェーン店の出店傾向を明らかにしている.宮木ほか(2012)は、茨城県つくば市の集落を対象として、都市サービス、生活の自立可能性に寄与する店舗立地の変遷を明らかにしている。また、森永ほか(2000)は、小売店舗などの生活利便施設の分布の特徴の把握を行い、他の都市施設との近接性や用途地域などの地域環境に応じて、ともに立地しやすい店舗業種の分類をしている。しかし、過疎地域を対象に、都市部と比較しつつ事業所の立地の多様性までを定量的かつ空間的に視覚化したものはみられない。

    2,対象地域と利用データ

    本稿では、茨城県の大子町と水戸市を分析対象注1)として、2009年の経済センサスより3次メッシュあたりの事業所数データを用いる。産業分類は同調査における大分類18産業とし、開設時期は1)1984年以前、2)1985〜1994年、3)1995〜2005年、4)2005年以降、の4分類とした。

    3,分析結果

    図1には、各地域の2009年の事業所の分布を示す。水戸市では、地域の全域に事業所立地しているのに対して、大子町では地域内の主要な道路注2)に沿った立地が多い。また、いずれの地域でも、鉄道駅を中心として店舗数の相対的に多い地区が広がり、乗降客数の多い鉄道駅の周辺ほど、その周囲に多くの事業所が立地する。

    図1
    (発表要旨ではモノクロであったが、カラーで再作成した。以下、同様)
    図1:各地域の事業所の分布

    図2、図3に、各地域において1984年以前と2005年以降の時期に開店した事業所数の分布を示す。水戸市では、いずれの時期も駅周辺の地区での開設が多い。また、近年の開設がみられない地区が増加する一方で、地域西側の駅のごく近傍のように、近年の開設が盛んな地区も存在する。大子町では、1984年以前では、主要道路沿いや、地域内で乗降客数の多い駅周辺の地区では事業所の開設が相対的に多かったものの、近年では、新規の開設がみられる範囲は水戸市よりも限定的になったといえる。

    図2
    図2:開設時期別の事業所の分布(水戸市)

    図3
    図3:開設時期別の事業所の分布(大子町)

    次に、(1)式のエントロピー指標により、地域に立地する事業所の多様性を視覚化する。

    式1
    ↑式1

    ここでPiは、各メッシュ地区内に立地する業種iの業所数が、全事業所数に占める割合である。図4より、いずれの地域でも、事業所が多く立地している地区では、立地する事業所の多様性も高いことがわかる。また、水戸地域西部の駅周辺では、小売業が特に多く集中しているため、店舗数の割に多様性がやや低い。大子町においては、地域の店舗立地の多様性が高い地区も多くみられるものの、店舗数が少ない中での業種のばらつきが反映されていると考えられるため、多くの店舗が多様性を持って立地している地域は非常に限定的であろう。先にも述べたように、この地域では、近年の事業所の開設も起こりにくくなっているため、地域の人口減少とともに事業所が減少する場合、上記のような多様性も保てなくなる可能性がある。地域の拠点整備を図る際には、現状の店舗立地が相対的に多い鉄道駅周辺などに事業所の誘致や立地誘導を図っていくことが重要であると考えられる。

    図4
    図4:各地域の事業所立地の多様性の分布

    4,今後の課題

    本稿では、過疎地域における都市地域との比較を行いつつ、過疎地域における事業所の立地やその多様性の空間分布について分析を行い、そこでみられる傾向を明らかにした。ここでは各メッシュ内に立地する事業所の業種の違いのみに着目したため、詳細な業種構成比やそれぞれの事業所が有する都市的な機能を考慮できていない。地域の拠点づくりのためにより多く知見を得るにはこれらを考慮する必要がある。また、実際には、地域住民のこれらの事業所の利用可能性も重要になる。今後はそのような点を踏まえ分析を行いたい。

    注1)前者は茨城県の市町村の中で全域が過疎地域であること、水戸市はそれと対照的な地方の中心的都市の位置づけとして選定している。
    注2)主要道路とは、一般国道,主要地方道(都道府県道,指定市道)のいずれかに該当するものを指す.

    参考

    [1]青木繁,宮澤鉄蔵,藤本信義,三橋信夫,鎌田元弘(1999),「中山間地域の商業立地の変容過程に関する考察 農村地域における商業環境の地域的特性に関する研究その1」日本建築学会計画系論文集, 520, pp.197-203
    [2]宮木祐任,根本拓哉,谷口守(2012)「集落に立地する都市サービスの長期的変遷に関する研究」, 土木計画学研究・講演集 Vol.46
    [3]森永武男,有馬隆文,萩島哲,坂井猛(2000)「生活利便施設の分布から見た生活環境に関する研究」, 日本建築学会 学術講演梗概集F-1, 都市計画, 建築経済・住宅問題 2000, pp.153-154





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