撤退の農村計画 > 記事 : 林直樹(2015):親の生活を支援するための移住の可能性.平成27年度農業農村工学会大会講演会講演要旨集,186-187.
  • 林直樹(2015):親の生活を支援するための移住の可能性.平成27年度農業農村工学会大会講演会講演要旨集,186-187.

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    ↓以下、要旨。

    1 調査の背景と目的

    Iターンの限界が見え隠れするなか,山間地の維持について,離村した子ども(他出子)が注目されるようになった。実際,親の近くに住む他出子は,親の日常生活を支援している(例:石阪・緑川(1))。筆者らは,遠方の他出子が親と同じ市区町村に移住し,親の通院や家事などを支援することを期待している。この調査では,親が都市に住んでいる場合も視野に入れ,そのような移住の可能性と障壁を明らかにする。得られたデータは,より正確な人口推計,山間地の生き残り戦略の構築などで活用したい。

    2 調査の方法

    2015年3月18日〜20日,全国の18歳以上の男女を対象に,ネットアンケートを実施した(マイボイス株式会社が実施)。性別・年齢層で10個のグループ(2)をつくり,それぞれから100件以上回収することを目指した(回収数1,033)。

    3 親の生活を支援するための移住

    (1)移住が可能な人の割合

    このアンケートでは,「親と同じ市区町村に移住すること」を「Uターン」と定義した。ただし,親と同居するかは問わない。親と別の市区町村に住んでいる人に,「親の通院や家事などを助けるため,いま,あなたがUターンを求められたと仮定してください」と述べたあと,それが可能かどうかを尋ねた。親が住む地域別の集計結果をFig. 1に示す。ただし,「親が住む地域」とは,親の住まいから徒歩15分以内の地域を指している。

    図1
    Fig. 1

    (2)移住できない理由

    前述の問いで,「Uターンは不可能」と答えた人に,その理由を尋ねた(複数回答)。親が住む地域別の集計結果をTable 1に示す。ただし,ここでは「山間の農村」と「平地の農村」を「農村」に,「郊外部」と「都市部」を「都市」に統合した。

    表1
    Table 1

    4 参考:出身市区町村への移住

    「0〜4歳で最も長く住んでいたお住まいがあった(ある)市区町村」を「出身市区町村」と定義し,現在,出身市区町村に住んでいない人に,そこへの移住(3のような仮定のない,漠然としたもの)について尋ねた(Fig. 2)。

    図2
    Fig. 2

    5 山間地の維持にむけて

    山間地の維持について若干の考察を加えたい。都市部や郊外部への移住の場合よりは低いが,親の生活を支援するために,山間の農村へ移住できる人の割合は,無視できるほどの低い値ではない(3)。高齢者の通院や家事などの支援ということでは,他出子が有力な戦力になるといえる。ただし,後継者として,そのまま山間の農村を守ってくれるかどうかについては未知数である。移住できない理由については,おおむね一般論にそったものになったと思われる。なお,4の結果から,特段のきっかけがない場合,山間の農村(出身地)への移住は,あまり期待できないことが示唆された(Fig. 2の「移住希望+移住可能」は5%未満)。ただ漠然と移住を待つだけでは状況は変わらないと思われる。

    (1)石阪督規・緑川奈那「過疎地域の高齢者と他出子―三重県紀伊長島町の事例調査を通して―」『人文論叢:三重大学人文学部文化学科研究紀要』22,pp. 111-128,2005
    (2)|棒10〜20代,男性30代,C棒40代,っ棒50代,ッ棒60代以上,女性10〜20代,Ы性30代,┰性40代,女性50代,女性60代以上。
    (3)性・年齢層に関する回答者の構成比は,現実のものとは異なる。厳密な移住可能率を得るためには,その点に関する補正が必要である。





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