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    第1回:山下良平(神戸大学)×林直樹(総合地球環境学研究所)【2008.3.12】
    シナリオ志向の農村計画を目指して―「ポスト市町村合併時代の農村計画」

    「撤退」では社会的なつながりを考える

    林:「撤退」について、どのように考えていますか。「撤退」といっても、いろいろな「撤退」がありますよね。「住宅地が撤退する」とか、「管理の労力が撤退する」、「権利関係が撤退する」とか。

    山下:コンパクトシティのような動きは、今の農村では、すぐには実現しないでしょうね。手本となる前例もないですし。(そのかわり)ネットワークは、農村計画学などでよく議論されていますね。ネットワークでコミュニティを維持しようと。

    林:以前何かのレポートで読んだのですが、集落が合併したら、合併した集落の面倒までみるのは大変だという自治会長さんの発言がありました。ネットワークで結ぶのはいいですが、つながったあとの面倒を考えると、「うちはうちで」、「あちらはあちらで」になるのでしょうね。

    山下:敵対とまではいわないけど、他の集落と基本的に混じり得ない主義・主張が日本の集団社会にはありますよね。「撤退」でも、経済的・物理的な面だけでなく、社会的なつながりも考えないといけないですね。


    移転に対する潜在的需要

    林:「労働力の撤退」を行えば、すべての農地を管理することは無理ですね。ただ、だからと言って、山奥の農地だからいらないといってつぶすのはよくないです。水田備蓄という考え方で、残すところは計画的に残さないと。

    山下:「撤退の農村計画」が目指すようなモデル地区みたいなものがあっても面白いですね。

    林:僕は意外に「やりたい」という集落が出てくるような気がします。ゴミ処理場を誘致したところがありますよね。自分らの故郷を捨ててもやっぱり安心して暮らしたいというのがあると思いますね。

    山下:声を出しにくい農村社会だけに、意外と企画をおこして進めていくと、乗ってくる集落は意外にあるかもしれませんね。見えにくいだけに見つけるのは大変かもしれないですけど。


    研究者はもう一歩踏み込んで

    林:計画学の研究者は、集落をモニタリングするだけでは不十分じゃないかという気がしています。

    山下:それは今までのパターンですよね。あえて積極的に言えば、研究者がさらに一歩踏み込んで、自分の提言を実現していく姿勢を持ち、行政などの協力も得て集落運営に貢献できれば、研究の意義をアピールできるかもしれないですね。

    林:いつも言っていますが、「毒にもなるものは薬にもなる」。研究者が毒にも薬にもならないことを追い続けるのはいかがなものかと。

    山下:農村計画学(の研究者)は、まずはフラフラしながらでも、計画を作らないと。「検証できないから動けない」では何もできないですからね。


    シナリオ志向で

    林:僕は、研究者が複数の計画をシナリオとして示して、市役所の人や住民に好きなのを選んでもらうというのが理想ですね。

    山下:僕はシナリオを考えることにすごい興味がありまして。シミュレーションしたペーパーを書くと、必ずシナリオの話が出てきますよ。シナリオ志向でやってほしいというのがこの研究会に期待するところですね。

    林:山下さんのシナリオ志向と、僕の目標志向は、全く同じだと思いますね。もうちょっと未来を見ていかないといけません。本日は貴重なご意見、ありがとうございました。

    撮影:齋藤晋
    編集:前川英城





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