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    第6回:松本文子(京都大学)×齋藤晋(総合地球環境学研究所)【2008.5.27】
    夢のある「撤退」―農村計画とアートプロジェクトのコラボレーション

    「楽しみ」のある地域づくり

    齋藤:松本さんは、アートプロジェクトを使った地域づくりをテーマに研究されていますが、地域づくりをどのようにお考えでしょうか。対談風景その1

    松本:今、お祭りが次々なくなっていますが、楽しい行事がないと人は住めないと思います。子供から大人までみんなが場を共有できる機会をつくることも、地域づくりには必要ではないかと思い、私はアートプロジェクトに注目しています。

    齋藤:確かに、行事や子供が、普段は話をしない人どうしの交流のきっかけになることもありますね。


    アートの「強み」

    齋藤:実際にアートプロジェクトの現場に行かれて感じたことはありますか。

    松本:私は集落単位で行われたアートプロジェクトを調査したのですが、それに参加したことで公園の管理や、商店街の自主事業が始まるケースもあったので、アートプロジェクトは集落に効果的な刺激を与えられるものだと思います。

    齋藤:1つの集落でアートプロジェクトをやったとして、周りにも影響は波及するのでしょうか。

    松本:危機感のある集落は参加しますが、安定感のある集落は参加に抵抗がある傾向があります。

    齋藤:アートプロジェクト以外の地域づくりのツールを考えたことはなかったのですか。

    松本:私は、既存の都市農村交流に違和感がある中でアートプロジェクトに出会い、強い衝撃を受けました。実際にヒアリングやアンケート調査をすると、参加した人の認知的な部分にポジティブな影響を与えるという結果が得られています。これがアートの力だと思いました。


    夢のある「撤退」

    齋藤:ところで「撤退」の視点に立つと、アートプロジェクトは移動可能なお祭りと捉えられると思います。お祭りは集落のある場所でやることに意味があるので、移動は難しいと思うのですが、アートプロジェクトならそれができるかなと。

    松本:集落の社会的文脈に沿ったアートプロジェクトなら移動可能だと思います。

    齋藤:移転前にアートプロジェクトで盛り上がり、それごと移転させれば、移転先にも楽しいイベントを確保できそうですね。医療や福祉も大切ですが、移転先でも楽しく生活できるという夢がないと、寂しいですからね。

    松本: 集落の文化の中から移転できるものをアーティストが発見できれば、「夢のある移転」も可能ではないでしょうか。「撤退」を前提としたアートプロジェクトというのも面白そうですね。「撤退」はコミュニティを新しいものに作り直すことですよね。その際に文化も新しいものに作り直さないといけないと思うのですが、アートはその仕掛けとなると思います。アートプロジェクトはしがらみがないので、集落外の人を含めて誰でも参加できます。

    齋藤:お祭りには閉鎖的な面もあると思いますが、アートプロジェクトは多様な関わり方を認めるイベントになりそうですね。


    計画サイドとアートサイド

    齋藤:アートは評価があるようでないようなものなので、評価に堪えうるようなものをどう出すのか。計画サイドには怖さがあると思うのですが。

    松本:自由に新しいものをつくるというアートサイドと、それを地域づくりに生かすという計画サイドとの戦いは必要でしょうね。

    齋藤:戦いの緊張感があれば、評価に堪えうるアートのクオリティが出てくるわけですね。


    具体的な事例を多面的に扱う

    対談風景その2齋藤:「この研究会にはこうあってほしい」といったご意見はありますか。

    松本:具体的な事例があるといいですね。経済面や文化面など、いろいろな視点からの考えを集落に提示できたら面白いと思います。あと、メンバーに足りないなと思うのは集落の人ですね。

    齋藤:その辺りが、この研究会の課題というか、期待されているところなのかなと思います。本日は貴重なご意見をありがとうございました。

    撮影:林直樹・齋藤晋
    編集:前川英城





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