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    第7回:江成広斗(京都大学)×林直樹(横浜国立大学)【2009.8.5】
    人と自然の新たな関係

    人と自然の新たな関係を考える

    林:江成さんはどのようなきっかけで「撤退の農村計画」に入られたのですか。対談風景その1

    江成:自然再生への関心からです。現在「里山の再生」というと、人間不在の景観再生になりがちです。その点、この研究会は、人が減るという現実の中で自然再生を考えており、すごく魅力を感じました。

    林:確かに、「昔はよかった」的な発想では限界がありますね。

    江成:人が減れば自然の領域が増えますから、自然再生を考えるうえで、人口減少時代に足を踏み入れた今は好機だと思います。ただし、単に過去への回帰ではなく、持続可能な新しい人と自然の関係を考えないといけません。


    獣害対策は計画的に

    林:ところで、江成さんは獣害研究もされていますが、獣害対策には計画的な観点が必要だということですよね。具体的はどういうことでしょうか。

    江成:獣害を防ぐ技術に電気柵があります。電気柵を設置すれば、イノシシ・サル・シカなどによる農作物被害はほぼ防ぐことができます。ただし、電気柵が断線・ショートしないように近くの草木を刈ったりするなどの継続的な管理をしないと効果は持続しません。獣害の現場を見ていると、電気柵の設置や持続的な管理ができない社会に問題があるのですが、動物生態の立場から獣害問題に取り組むと、より安価で管理しやすい被害防除技術の開発のほうにばかり目が向いてしまいます。もちろん、技術の発展は必要ですが、現実問題にはほとんど対応していないように思えます。

    林:つまり、獣害問題の真相は、人間側の社会に問題があるということですね。

    江成:そうだと思います。そして、獣害問題には、今発生している被害問題にうまく対処するための短期的なスパンの課題だけでなく、今後の農村社会の動きを加味して獣害を可能な限り予防していくための中長期的なスパンの課題があると思います。さまざまな視点を統合して野生動物を管理するためには、計画的な観点が必要ですね。


    一歩先を見た現実的な思考を

    林:先ほどの自然再生の話や今の獣害の話をお聞きして、自然再生や獣害対策を集落移転とリンクさせることは、非常に現実的な選択だと思いました。そのうえで自然と人間のあり方を論じることは、まさにこの研究会のメインテーマの1つですね。

    江成:そうですね。特に目標とする自然を再生させるには、何十年、何百年とかかる場合もあります。自然再生には時間がかかることを考えると、早い段階で決断が必要なこともあると思います。一歩先を見るということでは、獣害の話も同じです。

    林:時間軸を持った現実的な思考が必要ということですね。

    江成:中長期的なスパンで考えておくと、今やるべきことが見えてくると思います。

    林:それから、対象から一歩引くことも必要ですよね。あまり対象に深入りすると、現実的な思考は難しいでしょうね。


    人材育成と他流試合

    対談風景その2林:最後に、「この研究会にはこうあってほしい」というご意見などはありますか。

    江成:今述べた視点から研究や施策をやってくれる人をもっと増やすことですね。やはり、協働する相手がいないと、結局理想論にとどまりますしね。

    林:それは私も強く感じています。次代の研究の担い手を育てる仕掛けも必要ですね。

    江成:それから、ぜひいろいろな分野に、例えば野生動物の分野でも、積極的にアピールしてほしいと思います。もっと攻めて、もっと批判されましょう。

    林:なるほど。これからはもっとアグレッシブに他流試合をするということですね。本日は貴重なご意見をありがとうございました。

    撮影:齋藤晋
    編集:前川英城





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