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    第8回:山崎亮(studio-L)×林直樹(横浜国立大学)【2009.8.5】
    計画を「産み出す」人づくり

    住民との協働の必要性

    林:山崎さんは集落の中に入って様々な活動を行っている実務者として、気になることがおありだそうですね。対談風景その1

    山崎:助成金があるから事業をするケースがあるという話を聞いたことがあるのですが、それでは、集落の人たちの「自分たちのことは自分たちでやる」という自主性が失われてしまいます。

    林:順序が違いますね。助成制度と集落の人たちの自立性との関係を検証する必要がありますね。

    山崎:それから、「集落の人たちが『先祖代々の土地が大事だ』と言うから集落を残します」ではなく、集落の将来予測などのデータを示したり、集落の将来について議論したりして、集落の人たちとともに残るかどうかを考えることが必要だと思います。

    林:表面的な言葉をなぞるだけでなく、例えば、「この集落を残そうと思ったら、こういう対価が必要ですが、それを払ってでもあなたは残りたいですか」といった具体的なシナリオを示して、その反応の中からその人たちの求めることを取り出さないといけないですね。

    山崎:ええ。集落の人の言葉や想いを汲み上げた提案や事業がもっと必要だと思います。


    知識・技術の統合=「アーキテクト」

    林:具体的なシナリオを示しながら、個々の集落に思い切った提案をするのは、どのような人たちが適任でしょうか。研究者から集落の人たちに示すのもいいと思うのですが、研究者は提案の内容に普遍性を求めてしまうので、個々の集落の状況に応じた思い切った提案をするのは難しいかもしれないですね。

    山崎:その点は、建築家のほうが得意かもしれないですね。建築家は英語で「アーキテクト」と言いますが、いろいろな技術や知識(テクニック)を、1つに統合化(アーク)するという職能なのです。だから、獣害とか里山保全とか、いろいろな知見をバランスよく組み合わせて、集落の状況に応じた提案をする能力を持っているといえます。

    林:なるほど。建築家には素質があるわけですね。

    山崎:ただ、今の建築家は、作り出す空間の機能にはこだわる傾向がある一方で、そこで活動する人のことは考えていないこともあります。そこは改めるべき点ですね。


    7:3という黄金律

    林:ところで、先ほどの建築家の話を伺って思ったのですが、研究能力と実務能力がほどよくブレンドされた人材が集まるほうが、どちらか一方だけの人材が集まるよりも何かをやってくれるという期待が持てますね。

    山崎:ええ。その点この研究会は、研究能力が7で実務能力が3という人と、実務能力が7で研究能力が3という人が相互補完的に集まっているので、面白い構造になっていると思います。

    林:なるほど、7:3というのはいい目安ですね。

    山崎:移転を考えるときに、集落の人たちの発想は自分たちの生活が中心になるかもしれないし、行政の人たちの発想は行政上の手続きが中心になるかもしれないので、10:0かもしれない。こうした人たちを巻き込んで事業を行うなら、この研究会のメンバーはみんな7:3のほうがいいかもしれないですね。


    「限界」を感じる人たちのプラットフォームに

    対談風景その2林:この研究会にはどうあってほしいか、といったご意見はありますか。

    山崎:エネルギー、教育、福祉などの各分野で、「問題解決に個別に取り組んだのでは限界だな」と感じている人たちが集まってくるようなプラットフォームになってほしいです。そのためには、その人たちが関わるメリットをわかりやすく表示する必要がありますね。

    林:いろいろな人に来てもらって、その人たちをうまくまとめていく。その点ではこの研究会の方向性は間違っていないですね。本日は貴重なご意見をありがとうございました。

    撮影:齋藤晋
    編集:前川英城





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