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    第9回:吉田桂子(とわだリターンプロジェクト)×林直樹(横浜国立大学)【2011.1.23】
    山村へのIターンと山村からの離村

    (吉田桂子氏について)
    いわゆる「限界集落」で、Iターン者とともに、新しい山村の形を模索している。木造の校舎を「やまのがっこう、とわだ分校」として交流事業に活用。慶應義塾大学SFCとも連携。
    Webサイトはこちら
    http://www.yamanogakkou.net/



    Iターン者の適性

    林:吉田さんは、これまで多数のIターン者と交流してきました。Iターン者の適性について、どのように思いますか。対談風景その1

    吉田:農村を「逃げ場」ととらえる人にはむずかしいと思います。「周囲と関係なく自分だけで田舎暮らしを成り立たせたい」と思っている人も同様です。少なくとも集落構成員としての活動を否定しないことが求められます。それに加え、広い視野を持って、「自分から現状を変えたい」と思っている人が(山村へのIターンに)向いているような気がします。もっとも、これらは戸渡(とわだ)の場合の話で、地域によってちがいます。集落にある程度の力がある場合、あるいは逆に属する自治体が小さく、個々の集落まで施策が行き届く地域の場合は、ある程度吸収力がありますから、徹底した個人主義の移住者がいたとしても大丈夫かもしれません。


    Iターンの実際

    林:限界集落の場合、Iターン者は集落の即戦力として期待されていると思います。実際のところは、どうでしょうか。

    吉田:10人のIターン者のうち、1〜2人が集落の期待にこたえたなら、それで成功とのことです(笑)。


    これからIターンする人へ

    林:これからIターンする人へ、何かメッセージをお願いします。

    吉田:まずは「郷に入っては郷に従え」でしょう。もちろん、「何もかも」とはいいません。何か主張する前に、まず集落の一員として生活の足場を固めてほしいです。移住者支援制度のせいか、最近は「自分たちは呼ばれた側だ。」と勘違いしている人が多い。「なぜ集落が自分を受け入れたのか」をしっかり考えて行動してほしいです。


    外部からの支援者へ

    林:外部からの支援者について、どのように思いますか。支援者に求めることは何ですか。

    吉田:支援者のおかげで、集落や活動について多くの人々に知ってもらうことができ、様々な可能性もうまれました。その一方で、悪気はないと思うのですが、事業主体のメンバーになっている外部(市街地)からの支援者が、「お客さん」のようになっていることが多いです。何かするためには、見えないところで膨大な作業が必要になります。

    小さな集落の活動で一番大変なことは、内部(住民)のマンパワー不足です。メンバーになっている外部からの支援者には、もっと実務的なところに関わってほしい。活動することの意味や方向性を共有できていないためか、内外でモチベーションの源泉がちがうと感じることがあります。移住者も外部からの支援者に似ているところがあります。このような「問題」が集落の維持にむけての一番の懸案です。


    ばらばらの離村はやはり問題

    林:話はかわりますが、「撤退の農村計画」や集落移転(ばらばらではなく集団で山あいから平場に移住)について、どのように思いますか。

    吉田:行き場のない状態で「活性化だけやれ」と言われても苦しいです。撤退という選択肢があれば安心して活性化に取り組むことができます。ばらばらの離村によって隣の人もよくわからない状況に陥ることはつらいと思います。

    林:「(病気がちになって)都市部の子どもの家に行ったら人生おしまい」といった話を聞いたことがあります。

    吉田:過疎地の高齢者から「ほんとうは息子のところへ行きたくないが、行き場があるだけありがたいので(声がかかれば)『はい』と元気よく返事をして行く」という話を聞いたことがあります。「はい」というときの顔をみせてくれたとき涙が出ました。

    林:ほんとうに胸が熱くなってきます(集落移転のよしあしはさておき、ばらばらの離村は大いに問題)。


    撤退の農村計画へ

    対談風景その2林:「撤退の農村計画」のメンバーへ何かメッセージをお願いします。

    吉田:現場・行政・研究者などがもっとビジョンを共有できるように、ことば(「撤退」など)の定義を統一、あるいは整理してはどうでしょうか。そうしないと当事者の間ではネガティブな面が強調されてしまいます。ことばが(意図しない方向に)都合良く利用される危険もあると思います。加えて、「対象とする集落」も、もっと絞り込んだほうがよいかもしれません。

    林:肝に銘じます。本日は貴重なお話をありがとうございました。

    写真撮影担当:齋藤晋
    テープ起こし担当:工藤藍子





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