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    第10回:永松敦(宮崎公立大学)×林直樹(横浜国立大学)【2011.11.14】
    新たな自然や生業の創出に民俗知をいかす

    民俗知の活用を

    林:永松さんは民俗学がご専門と伺っています。国全体の人口が減少する時代にあって、わたしたちは、どのような文化を守るべきとお考えでしょうか。対談風景その1

    永松:あえて順位をつけるのであれば、環境保全と食料供給につながるものを優先的に守るべきでしょう。例えば、古くから伝わる焼き畑農法、ため池管理技術などが、それに該当します。生物多様性の保全という点では、開発を受けない聖域、沖縄の「ウタキ」のようなものも大切です。
     ただ、古いものをそのまま守るべきとは思っていません。新たな自然や生業の創出に、文化(この場合は民俗知)をいかすべきと考えています。現代的な技術との融合も必要かもしれません。民俗知の活躍の場は、昔ながらの農山村だけではありません。土木工事によって改変された環境、ビルの屋上でもよいと思います。宮崎の高鍋湿原は、ハッチョウトンボなどが生息する貴重な自然ですが、もともとは砂防ダム工事の副産物です(高鍋湿原の形成や維持に民俗知が用いられたという意味ではありません)。


    文化を守る拠点のありかたは

    林:消滅直前の文化については、どのように守ればよいでしょうか。

    永松:ひとつは映像化です。「種火集落」のような拠点をつくることも必要でしょう。

    林:文化を守るための拠点ですが、それを選定することが可能でしょうか。

    永松:可能かどうかはわかりませんが、少なくとも、「変なお金が落ちないように」、利権が発生しないように注意すべきです。拠点を固定する必要はないでしょう。輪番制でもよいと思います。


    学問と政策提言、文化とは変化するもの

    林:学問における問題点については、どのようにお考えでしょうか。

    永松:民俗学や文化人類学といった学問領域は、過去、植民地支配に利用されたという歴史があり、「研究者は政策提言を行うべきではない」という意見が根強く残っています。正否はさておき、政策提言そのものについて、大きな対立があります。
     学問に限ったことではありませんが、神楽といった「ひとつの行事」に注目しすぎることも問題でしょう。地元にとっては、あくまで無数にある生活要素のひとつという点を見落としてはいけません。
     文化そのものに対する認識にも気をつけるべきです。伝統といえども、文化は変化しつづけるものです。それこそが、自然な姿と考えています。ですから、地元のかたは、「文化を変化させている」という意識はないと思います。ただし、「変化させる」といっても、外部の人がかかわる場合は、慎重になるべきです。


    積極的な意見の発信を

    対談風景その2林:なるほど、とても参考になりました。最後に共同研究会のメンバーのみなさんに、メッセージをお願いいたします。

    永松:共同研究会には、研究者だけでなく、行政や現場のかたも、いらっしゃいます。いろいろな角度から、意見をいただくことができる点は、ありがたいです。できれば、農家の方のさらなるご参加を願うところです。
     今後についていえば、もっと積極的に意見を発信すべきと思います。例えば、定期刊行物を作ってはどうでしょうか。いわゆる論文集ではなく、現場のかたも気楽に執筆できるようなものがよいでしょう。

    林:ありがとうございました。定期刊行物については、さっそく検討したいと思います。

    写真撮影担当:齋藤晋





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