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    現代版里山鍼灸(しんきゅう)師制度の確立に向けて(中根一・川嶋総大)

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    要旨

     既存医療システムの課題について簡単に言及したのち、鍼灸(しんきゅう)師の導入、既存医療システムとの連携、「現代版里山鍼灸師」の創設について説明した。「現代版里山鍼灸師」は、既存医療システムと連携した鍼灸師、配置薬の販売員、過疎集落の集落支援員をミックスしたものである。問診を重視する鍼灸師は、地元との信頼関係も構築しやすい。現在、制度の確立に向けて、試行錯誤を重ねている。

    鍼灸


    本文

    (1)過疎地域での既存医療システムの課題:コストと人材
     若者のUIターンのような派手さはないが、過疎対策の基本は、集落の高齢者がいきいきと生活できるように支援することであり、その最大のキーワードが「医療」であると考えている。高齢になると、悩みの中心が、生活習慣病や老化による退行変性といった慢性疾患に移行するため、より継続的な医療が求められるようになる。よって、患者からみても、財政からみても、長期的には支出が多額になることが多い。人口密度が低いことも、さまざまなサービスのコストを押し上げている。一方、志ある医師による往診も見られるが、医師(人材)の不足も、依然として深刻な問題である。

    (2)鍼灸(しんきゅう)師の導入および既存医療システムとの連携
     このような問題に対して、われわれは、鍼灸師の導入および既存医療システムとの連携という選択肢を提示したい。現在の鍼灸は、神経痛やリウマチなどの治療法として、WHO(世界保健機関)からも認められている。鍼灸師には免許(医師法・あはき法)も必要である。
     鍼灸師の平均年収は400万円前後であり、医師(1500万円)と比較すると非常に安い。主な医療器具も「はり」「もぐさ」だけである。人材も比較的豊富であり、全国の鍼灸学校は141校(2004年)、毎年の新卒者は約6千人にのぼる。つまり、コストや人材をみても、鍼灸には有利な点が多い。 加えて、鍼灸師は、住民の日常的な健康状態をリアルタイムで知ることができる。この情報を既存医療システムと共有することで、コストをおさえた質の高い医療が提供できると考えている。なお、鍼灸師の導入および既存医療システムとの連携については、過疎地域にかぎらず、都市部でも効果的な手法である。

    (3)現代版里山鍼灸師
     「現代版里山鍼灸師」の職務は、既存医療システムと連携した鍼灸師、配置薬の販売員、過疎集落の集落支援員の職務をミックスしたものである。(ア)鍼灸師として日常の健康をサポートすること、(イ)配置薬の販売員として常備薬や日用品を提供すること、(ウ)集落支援員として地元の視線で「むらづくり(集落移転も含む)」をサポートすることが期待されている。よい意味で庶民的であり、問診を重視する鍼灸師は、地元との信頼関係も構築しやすい。基本に立ち返って考えれば、(ア)と(ウ)の結合は、むしろ自然であろう。なお、過疎集落には、鍼灸院に改装可能な校舎(廃校)や空き家も少なくない。
     われわれは、過疎地域の新しい職の選択肢として、「現代版里山鍼灸師」を提案したいと思っている。現在、制度の確立にむけて、試行錯誤を重ねているところである。採算、個々人の適性、人材育成の仕組み、教育・研究機関との連携のあり方など、検討すべきことは非常に多い。続報に期待していただきたい。われわれの最終的な目標は、100年先を見据えた医療の再編(再構築)である。


    中根一:鍼灸Meridian烏丸,共同研究会「撤退の農村計画」
    川嶋総大:株式会社はり灸おりべ


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    著者:中根一・川嶋総大
    該当ページの題名:現代版里山鍼灸(しんきゅう)師制度の確立に向けて
    ウェブサイト名:撤退の農村計画
    URL:http://tettai.jp/info/isrr_m12002.php
    該当ページの更新年月日(内容の更新のみ):2012年6月30日





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